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お雛様
ふるさとに帰りし雛の笑みの顔

 昨年孫が生まれて今年は初節句なので、私の実家に眠っていた古いお雛様を譲り受けて宏樹庵の床の間に飾った。

段々も緋毛氈も無く少し手間取ったが、並べ方などは近所の家のお雛様を参考にしてやっと飾り終えた。

お雛様


このお雛様は相当古いもので、でも、お内裏様たちはたいそう気品があり、三人官女の右の立っている人は大奥の女の人みたいに少し上向き加減に微笑んでいたり、真ん中の座っている人は少し頭を傾げて奥深そうにしていたり、五人囃子もそれぞれ皆違う表情で楽器を演奏しているなど、老若男女、凛々しかったり内気そうだったり、とても表情が豊かだ。柄帽子や持ち物も凝っていて、特に刀は3本とも抜けるようになっており、鞘は黒塗り、抜き身はピカピカでまるで刃があるような作りには驚いた。

左大臣


筒持ちの人

五人囃し



父は、このお雛様は、父の母がお嫁に来た時持ってきた物かも知れないから100 年近く経っていると言っていたが、叔母に聞いてみると、元々あったお雛様は戦争で全部焼けてしまって、父の父が戦後すぐ、闇市でいいお雛様を見つけて買ったのだそうだ。「そのお雛様を売った方は余程食べる物に困って止む無くそれを手放したのだと思う、私が10歳くらいの時だったけど、このお雛様は古来から伝わった物だと感じた。」

と、叔母は話してくれた。それを買った時から既に段々も緋毛氈も無かったそうで、祖母は着物の裏地を緋毛氈の代わりに使っていたそうだ。

結局、どんな作り手が、いつこのお雛様を作ったのか判らず仕舞いになってしまったが、こうして飾ってみると、何かお雛様には心が宿っているようで、ふるさとに帰って日の目を見て、うれしそうに見える。

孫がこのお雛様を目の前にしていたずらをするかと心配したが、孫の心にも手出しが控えられる程、お雛様の存在感の方があるらしい。

 鶯がいっせいに鳴き始めた。