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1914年の軌跡 アンサンブルシリーズ27

ヨーロッパ列強の国々はそれぞれが世界各地を植民地化し、列強同士複雑な同盟、対立関係になっており、摩擦が強くなってきた。19146月のサラエボ事件をきっかけについにドイツ・オスマン帝国・ロシアからなる同盟国と、イギリス・フランスなどを中心とする連合軍に分かれて戦争が始まる。初めての世界大戦だった。フランス人のラヴェルは同志が次々に参戦していくのを見て、アルザス・ロレーヌ地方の奪還という愛国心に燃え、書き始めたピアノ三重奏曲を通常なら5か月かかるところを5週間で書き上げ、航空兵に志願する。しかし、39歳という年齢と元々虚弱体質であったことから兵役は拒否される。しかし、何度も志願するうちにようやく認められたのはトラックの運転手の任務で、これは銃弾の飛び交う戦場を走るという非常に危険な仕事だった。しかし、トラックはすぐに故障し待機の身となる。

このピアノ三重奏曲については、戦争に出向くことになってもはや生きては帰れないかもしれないと覚悟を決めて書かれた曲なので「遺言状」と捉える説がある。しかし、戦争が始まった当初は戦争はクリスマスまでには終わるだろうと思われていた。フランス兵は高らかに「ラ・マルセイユ」を歌って戦場に出かけて行ったと言う。ラヴェルも多分自分が死ぬという凄惨な覚悟を決めて戦地に赴いたのではなかったのではなかろうか。

この戦争は結果的には悪条件が重なり長期戦となって、世界中におびただしい数の死者を出し被害も甚大なものとなってしまう。

これによってヨーロッパの君主制は崩壊し、その後、各地で自由な芸術が多く芽吹いてくる。

トゥリーナは1882年にスペインアンダルシアのセビリャで生まれる。セビリャはアンダルシアの中心都市で数々の名作オペラの舞台としてクラシック界でもお馴染みの街である。初めマドリード音楽院で学ぶが1905年にパリに渡りスコラカントルムで作曲、ピアノを学ぶ。そこでドビュッシーやラヴェル等とも知遇を得るがアルベニスやファリャからスペイン民謡やアンダルシアに根差した音楽を確立することがセビリャ人としての使命と助言を受け1913年スコラカントルムを卒業後1914年にファリャと共に帰国する。その後、作曲家、教師としてスペインのアルベニス、グラナドス、ファリャに続く功績を遺す。

今回のアンサンブルシリーズで演奏する作曲家のうち一番若いプーランクは1899年パリ生まれ。裕福な家庭で母にピアノの手ほどきを受け、1914年からはスペイン出身の名ピアニストでラヴェルの作品を多く初演したリカルド・ビニェスにピアノを師事する。ビニェスの紹介で後のフランス6人組のメンバー、ジョルジュ・オーリックやサティらと出会う。ラヴェルにも会っている。

 

アンサンブルシリーズ27

12月5日に演奏するトゥリーナとプーランクとラヴェルの1914年の動きをまとめてみました

合わせの練習も始まりました。

是非皆さんお誘いあわせの上ご来場下さい。

さんざしの実

さんざしの赤い実も台風でだいぶ落ちた。姫リンゴの大きさで噛むと甘酸っぱい香りが口に拡がる。山田耕筰の「この道」の歌詞に出て来るさんざし。金木犀の盛りは終わった。二本ある。小菊が庭のあちこちに咲き揃い始めた。秋明菊の紅色の花も伸びてきた。紅葉は最後の緑色を放って、今か今かと赤く染め始める時をじっと待っている。秋が、見えないがすっかり準備され、いつでも始められるような微妙な季節。庭のモッコクの奥は万両の枝がようやく識別できる程の仄暗さが更に奥へ奥へと拡がっている。よくは知らないが、ガーデニングと称する西洋風の庭作りは、どの草木も全て明らかになるように配置され、晴れた日はどの植物も嬉しそうに陽を浴びているような気がする。和風の庭は暗い陰の部分をわざわざ作るのか、或いは出来てしまった陰の部分に陽を浴びせるような工夫はせずそのままにしておくのか、その暗がりが何とも言えない風情を醸し出している。苔を生かした庭も多いが、苔も少し暗く湿っぽさがないと美しく育たない。庭の隅々までライトアップして明らかにしてしまう心持ちは和風庭園には無い。陰の所に何かがありそうな興味、創造が湧く。虫の音もその暗がりから聴こえてくる心地がする。小鳥がバサッとそこから飛び立ったのか万両の仄暗い枝が揺れたような気がする。

暗闇を愛でる風情はだんだん世の中から失われつつあるが、暗さの奥に向かって想像すると何かが在り、うごめいているような怖さのドキドキは失いたくない感覚だ。何もかも明らかにならないと気が済まない、或いは明らかになっているという錯覚の中にどっぷり浸りつつある現代。僅かに残っている本当の暗闇を大事にしたいと思う。

 陽に当たったさんざしの赤い実がひときわ鮮やかな秋の日。

2016.10.10

日本フィル2016年宇部公演

10月16日(日)午後2時より宇部市渡辺翁記念会館にて日本フィル宇部公演が開催された。

宇部興産が地域の人達への企業としての還元事業でチャリティーコンサートとして定着している。本公演の前日には山口大学付属病院や宇部興産中央病院でのロビーコンサートが行われる。これは病院の患者さんや職員の人達だけでなく広く市民にも開かれ客席はいっぱいだそうだ。また市内の中学校でのレクチャーコンサート、チケットの売り上げで学校への楽器贈呈、そして本公演。今回は9回目で指揮者に大友直人氏、ヴァイオリニストに南紫音さんが招かれた。プログラムはメンデルスゾーンの序曲、コンチェルト、交響曲第4番「イタリア」。本番直前に舞台に大友氏と南さんが登場して曲に対するトークなどあり、期待が膨らむ。

余りにも有名なヴァイオリンコンチェルトを南さんは憂愁たっぷりに美しく歌い上げた。

終演後は全日空ホテルにて打ち上げ。宇部興産社長、宇部市長などお歴々の参加で大層盛り上がった。河村建夫氏、林芳正氏も見えていた。挨拶の後の締めは日本フィルのメンバーと宇部市民オケのメンバーによる弦楽合奏そして「青い山脈」と「故郷」の合唱。今年も楽しく有意義に演奏会は終わった。

 

宇部公演

開場前から長蛇の列

大友氏と南さん

大友氏と南さんのトーク

打ち上げ

打ち上げでの演奏

 

 

石井啓一郎&啓子旭川リサイタル

10月11日(火)午後7時より旭川市のホール木楽輪(きらりん)にて石井啓一郎&石井啓子リサイタルが開催された。主催は石井啓一郎&石井啓子リサイタル実行委員会。

木楽輪は元は木造館と呼ばれていた。この地方のエゾマツやカラマツをふんだんに使って美しい曲線を描くホールは大変よく響く。会場に午後3時前に入り練習し始めた時、ちょっと響きすぎて戸惑った。カーテンを閉め、ピアノのコントロールにも徐々に慣れ、ようやく落ち着いてきた。

岩国では10月に入ってからも30度近くまで気温が上がり暑かった。旭川へ出発する日の朝やっと涼しくなった。天気予報で旭川の最低気温5度と報じられていたのでコートやスカーフなど用意したが、寒くても部屋の中は暖かいのだからと安心していた。ところが、寒くなって家庭ではストーブが手放せなくなったのに、公共施設にボイラーが入るのは11月になってからだそうで、ホール内には暖房無し!袖のないドレスなのにどうしよう。急きょ、ホールの中にあった古い暖房機のスイッチを入れる。しかし久し振りにスイッチを入れたためか初めなかなか点灯しなくて係の人は慌てていた。やっと点いてホール内は暖かくなってきた。でも楽屋が寒い。スタッフが暖かいお茶を買ってきてくれたり、隣りの公民館から電気ストーブを借りて来たりしてくれた。地元の人も「秋を感じる間もなく冬!」と言うほどの急な気温の下がり方だった。

お客さんは80人余り。ホールも広くはないのでそれでいっぱいに見えた。旭川で二人でコンサートを始めて丁度今回で20回目。ずっと事務局長を務めてくれたN氏は今年自分の会社をたたみボランティア的な仕事に携わるようになって結構忙しいらしい。足腰も痛いと言っている。まだまだ石井啓一郎啓子の演奏を聴きたいが誰か代わりに手を挙げてくれる人がいれば全面的に応援はすると話していた。

終演後は老舗のスナック「アドリブ」にて集う会。ご主人が重い病に臥せっている時石井が枕元で「愛の哀しみ」を弾いて以来、大の石井ファンになったママ。当夜は急な病気で来れなかった。お店はママがいなくても娘たちが引き継いでいるので開けられたが会いたがっていたママに娘がスマホをつなぎっぱなしにしておいて石井の演奏を聴かせた。電話の向こうでママが喜んでいるのが感じられた。また、今回はその娘の娘が自分の仲間を連れてお店に来ていた。若い人達に期待したい。

だが、来年の開催への手がかりを少しつかみつつ、確約できないままその晩は別れた。

 

街路樹ナナカマドの実が美しく色づいていた。

 

プログラムアドリブにて

 

旭川駅裏

JR旭川駅の裏側 きれいに整備された公園になっている

中学校2校訪問演奏会

夏に入る前から準備を進めていた岩国西ロータリークラブ主催の石井啓一郎ヴァイオリンコンサートが、10月6日午前10時から岩国市立岩国中学校にて、午後1時35分からは麻里布中学校にて行われた。

これはロータリークラブが提唱して、岩国市内の中学校を年2校ずつ3年間かけてがん予防の話とコンサートをセットにしてまわってみようという企画。当日前まで会場の図面や動線、タイムスケジュールなど細かいところまで何度も打ち合わせてロータリークラブの人達の熱意を感じた。少し前から台風の進路に当たっていて心配したが、前日に台風は通過。岩国市内の全中小学校はその日休校になったが大きな災害にはならずほっとした。そして当日の朝、爽やかに晴れ上がった空のもと、岩国中学校へ出向いて行った。

がん予防のお話しは今回はロータリークラブ会員の兼田氏が担当。話が15分くらいで、その後1時間のコンサート。岩国中学校生徒数約500人、麻里布中学校は生徒数約400人、それに先生たちと保護者の方々が加わって体育館には熱気がこもった。2校のうち、岩国中学校は錦帯橋にも近く、古くからの家が多くて近隣の移住も少ない地域、麻里布中学校の方は商売の家が多いとのこと。生徒の音楽の受け止め方には微妙な違いがあった。岩国中学校の方はおとなしく、しっかり聴いているという感じ、麻里布中学校の方は少しざわめきなどもあるが反応は大変良く、おもしろい音と感じた時には笑い声も。

プログラムは愛の挨拶に始まり、シューベルトのソナチネ、クライスラーの小品、ウェーベルン、最後はチゴイネルワイゼン。やはり目の前での演奏はCDなどの演奏とは全く違って、生徒たちがあんなに引き込まれ、聴き入っているのには先生方もびっくりしていた。

 

コンサートホールまではなかなか足を運べないような里山の中学校にも行ってみたい、もっとたくさんの保護者達も来れるような曜日設定にしてみたい、など、これからの企画に夢がふくらんだ。

岩国中学校

岩国中学校での演奏(上下とも)

岩国中学校2

 

麻里布中学校

麻里布中学校での演奏

2016年10月以降のスケジュール

10月6日 AM10時 岩国市立岩国中学校  PM1時35分 岩国市立麻里布中学校 

     石井啓一郎ヴァイオリンコンサート

10月11日 PM7時 旭川市木楽輪

               石井啓一郎&石井啓子リサイタル

10月15日 宇部市中央病院ロビーコンサート 山大医学部付属病院ロビーコンサート

     石井カルテット

10月16日 PM2時 日本フィル宇部公演 宇部市渡辺翁記念会館

11月3日  PM2時 桜庭邸サロンコンサート

12月5日  PM7時 東京文化会館小ホール

     石井啓子アンサンブルシリーズ

12月17日 岩国国際観光ホテル

     石井啓一郎サロンコンサート